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【インタビュー】ロンドンで新作発表の「ミチコ ロンドン コシノ」 初のプレゼンテーションの手応えは?

(取材・文・撮影 高嶋 一行

2017.1.19
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プレゼンテーション形式で発表した「ミチコ ロンドン コシノ」


昨年30周年の節目を迎え、日本はもちろん世界中で注目を集めるブランド「MICHIKO LONDON KOSHINO(ミチコ ロンドン コシノ)」。拠点とするロンドンでは、ここ最近ロンドンファッションウィークメンズの公式会場にて展示会を行っていましたが、今シーズンからは展示会に加えてプレゼンテーション形式でも発表。メンズを中心とするユニセックスブランドであり、ストリートなファッションデザインとして支持を得ています。今回、デザイナーであるコシノミチコ氏にインタビュー取材を行い、ブランドだけでなくヨーロッパでのビジネスに関する背景も伺いました。

 

ショーはエゴ!プレゼンテーションこそ親切な見せ方


ミチココシノ氏(以下M):2008年までずっとファッションウィークに参加していたんだけど、色んなことが重なって参加しない時期があって。4シーズン前からまた、ロンドンファッションウィーク会場での展示会にだけ参加しています。展示会に参加してから今回初めてプレゼンテーション形式で発表したの。それまでずっとイタリアなどで活動していたから。

―展示会のみの発表から、プレゼンテーション形式にステップアップしたということでしょうか?

M:ステップもアップもないんだけど、何しろ自然に。昨年2016年がミチコロンドンの30周年記念で、大きなイベントを(日本で)したわけ。3カ月前なんだけど、東京と大阪でそれぞれ10月と11月にね。その隙間を割いてロンドンに帰ってきて、ばーっとコレクションをデザインして、また日本に帰って、と行ったり来たり。なので、今回はものすごく短期間でできたコレクションです。4シーズン前からメンズを中心に出してるから、「なんでメンズなんですか?」ってよく聞かれるんだけど、メンズは私にとっては簡単なの。簡単と言うと誤解を招くかもしれないけれど、メンズのデザインは結構直線だから。

だから、レディースのようにフィッティングを何回もする必要がない。忙しい中でもコレクションができたのはメンズだからかなぁ。メンズは割とデザイン画通りにぱっぱっとできる。

―ゆくゆくはロンドンにてショー形式の発表をするつもりですか?

M:昔、キャットウォークショーなんて毎シーズンほとんどやってたの。2008年まで毎シーズン、東京でも大阪でも。今回初めてプレゼンテーション形式で発表をしたんだけど、これはすごく新鮮だと思った。キャットウォークショーがファッションデザイナーの1番の“誉(ほまれ)”みたいにみんな言うけれど、私はプレゼンテーションの方がいいです。ディテールや着用した時のデザインなど、じっと目の前で見られるからすごい!はっきり言ってバイヤーの方に対してとても親切だと思った。

ショーだと、モデルがばーっと歩いて、写真をぱらぱらと撮られて、マガジンとかテレビに載る。それってすごいエゴイズムだと思うの。「ちゃんと見せてないじゃん!」って。プレゼンテーションの方が、バイヤーにものすごく親切に見せられることで、そう感じました。

 

イギリスはプレゼンテーションの場 実際に売るのはパリ


―あいにくの雨、そして大混乱の地下鉄ストライキの悪影響がありましたか?(※この日、ロンドン中心部の地下鉄がストップするストライキにより、交通機関が麻痺していた)

M:きょうは最悪なコンディションでしたね。コンディションがよかったら、ものすごくたくさんの人が来てくださる予定だった。600人くらい集まる予定だったから。だけど、このコンディションでも、大切な方には結構たくさん会えました。それはよかったです。今後のスケジュールとしては、パリのメンズコレクションの「トラノイ」に出すんですよ。その時が勝負!イギリスは絶対にプレゼンテーションのみで、セールスというよりはプレス。イギリスってそういう役割するんですよ。売ったり買ったりという役割ではなくて、マガジンやメディア。それのみ。実際に売るのは、フランスのパリなの。フランスは絶対(バイヤーが)来るから。

私はイギリスを拠点としているけれど、セールスを見ればイタリアとかスウェーデンとかドイツとか、そういうところに売ってる。みんなイギリスには買い付けに来ない。「イギリスのプレゼンテーションは行けないけれど、トラノイは行くから。パリで買います」という人ばかりです。

―次のスケジュールとしてはトラノイにも参加されるんですね。

M:「トラノイ」は1月20日からだから、まもなくですね。よく「どうして1月に?どうしてメンズで参加するの?」と聞かれるんですが、利点があるんです。と言うのも、メンズコレクションの時期は1月と6月ですが、ですが、もうこの時期にレディースも発表して作っちゃえるわけ。1月と6月の展示会であれば、オーダーをもらったら必ず100%デリバリーできるんですよ。

逆にレディースのコレクション発表の時期は2月と9月。このスケジュールだと、絶対無理なの。一生懸命生地を買って、パターンやって…と頑張っても、デリバリーができなかったら今までの苦労が全部終わり。でも、1月と6月なら確実にデリバリーができる。だから、メンズコレクションの時期に発表しています。

 

「納期を守ること」がいつも最優先


―コレクションの生産はイタリアが多いのですか?

M:ずっとイタリアだったんですけど、ちょっとデリバリーが遅れたりするので、大切なものは必ず日本で行います。さらに今は、ポルトガルでの生産に向けて調整しています。すごく上手く縫製をする工場がいっぱいあるので。今回のシーズンなどは、日本でのショーのために、日本とロンドンを行ったり来たりしていたので、私がチェックできるところで生産できたらいいなと思って日本にしました。

―イギリスで生産はされないのでしょうか?

M :イギリスでは生産しない。絶対そういう工場がないの。何年もイギリスにいて何回もトライしたけれど、縫製がむちゃくちゃに上がってくることもあり完全にギブアップしました。いろいろ試したけど無理だったの。スコットランドなどは質のいいニットなどがあるんだけど、そんなにニットばかりやるわけにはいかないし。テクニックやマシンなどのよい設備を考えると、ニットの生産はイタリアになるんです。

―イギリスのEU離脱の影響を不安視するファッションブランドも少なくないです。生産やセールスに関して影響や不安な要素はありますか?

M:私たちに不安はないです。最初から向こう(イギリス外のヨーロッパ)でやっているから。イギリスで大量に売ってたらいいんだけど、ほとんどヨーロッパでセールスしているから。ヨーロッパで作ってヨーロッパで売ってる。なので、今までとあんまり変わらないと思います。

―ブランドの拠点はイギリスだけど、セールスは全てヨーロッパなんですね。

M :先ほども言いましたが、生産もほとんどイタリアだったんです。だけどデリバリーが遅れたりする。それがいちばん最低なことなの。

結局コレクションを売るタイミングってあるんですよ。それが1月から2月、そして9月。この時期を逃したら、絶対誰も買ってくれない。納品してもどーんと返ってくる。

―次のシーズンにも響くということですか?

M:絶対に響く!絶対に次のオーダーが来ない。デリバリーが遅れたら、それだけでもう次に買いに来ないの。納期は絶対に守らなければならない最優先事項。だからコレクションの発表を1月、6月にするんです。

 

10年待った今「波を感じている」


―別のメディアで、「ファッションには波がある」「待つ時は待たなあかん」「自分の波がきたらそれに乗る」とおっしゃっていましたが、今、自分への波を感じますか?

M :思いっきり感じてます。というのもクラブファッションとか80年代のデザイナーブランドとか、あの時はブームでもうすごかったんです。結局、2007年からオートクチュールがはびこって、それをコピーするのにハイストリートなブランドがどっと出て。私らのようなクリエーションでなにかをするっていうブランドの時期ではなかった。イタリアで一緒にやっていた会社やブランドも全部潰れています。

でもその2007年から10年でまた変わってきたの。だから絶対さ、待ってよかったと思った。これから、「また来てる!」って感じがする。若い人達って、私らがやってた30年前のことを知りません。それがまたすごくて。私が昔デザインしたアーカイブなど30年前のものが思いっきりコピーされているから。それでびっくりして。

ネットでも雑誌でもパッと調べたら、どのブランドのアイテムも何年のどのコレクションってわかりますよね。どうやら調べてみると細かい部分までコピーされていっしょなの。それが結構売れてるレーベルのアイテムだったから、「そんなアホな!」って感じ(笑)。

―波がくるまで約10年待った期間は長かったですか?

M :そんなに長いとは思わない。やっぱり「待つ時は待たないといけない」と思った。なんでかと言うと、フッションは必ず“波”だから。

ここ10年は、どこにでもあるような退屈に感じる、割と普通っていうデザインがずーっとはびこってたわけ。そういうときにデザインしてもしょうがないですよね。だから無理してデザインしない。デザイナーでなくてもいいわけですよ。例えば口だけの「ひょうきんデザイナー」でもいいわけですよ。何気ない会話などで、「こんなんであんなんで、こんなん作ったらー?」って言ったらすぐに実現できる。簡単に服が作れる時代だから。

でもやっぱり買う人が普通に飽きてきて、またちゃんとしたデザイナーのものを着たいっていう波があるんです。それが今来てるんです。

―待ってる10年間にアイディアをキープしておいたりしましたか?

M :デザイン画がたくさんありますよ。貯めてるというよりは、描き続けています。それをいつでも出していいわけ。ストックはいっぱいある。

さらに待っている10年はしっかり働いていたんです。イタリアレーベルなどでライセンス契約があったので、休んではいません。自分でキャットウォークショーとか、プレゼンテーションをしなかっただけ。目立つことをしなかったけれど、裏方の仕事を色々してました。

イギリスで話題になることをやってなかっただけです。イギリスっていうのは、売ったり買ったりの世界じゃない。メディアだから。メディアに露出してなかったから、周りからはやってなかったと思われてますが、裏でやっていたし、休んでたわけではなかったの。

 

「ミチコ ロンドン」はラッキーの集まり


―昨シーズンはラフォーレ原宿でも期間限定のポップアップショップが話題となっていましたが、実際にたくさんの若い方と会って、80年代の若い方と違いを感じましたか?

M :何にも違いはなかった。違和感もなかった。なぜポップアップショップが実現したかというと、ミチコロンドンが30周年だったから。ラフォーレ原宿の方から、「ポップアップショップをやってほしい」って声をかけてもらったのが始まりです。

30年くらい前、ミチコロンドンがむちゃくちゃブームになってて、ちょうどその頃、久保田利伸がデビューするタイミングだったの。「この子、面倒見てくれへん?」って紹介されて、衣装などを一緒にやり出したわけ。そしたら久保田利伸が売れて、全国ステージなどを全部担当した。

その時の利伸ファンの人たちがミチコロンドンを持っていて、やがてお母さん世代となり、娘や息子が昔のミチコロンドンの服を来てラフォーレに来てくれたの。本当にファッションが1周回って「えーっ!」て感じ。昔のファッションが流行ってきて、お母さんの服でも逆に新鮮になるわけ。だから、何も変わってないと思います。

―今回のミチコロンドンのプレゼンテーションは、ロンドンファッションウィークメンズスケジュールの最後でした。大トリとなったのは狙いですか?

M :えっ?全然知らない。最終日にあるっていうのは聞いてたけど、「わかりましたー」って感じで。そんな大げさな理由などなく、ただの偶然です。

外国のジャーナリストやバイヤーが結構足を運んでくれたからよかった。偶然だし、そんな欲も何もないし。スケジュールなんてどうでもいいんですよ。時間を与えられたから。あとは「オッケー!」て感じで。

―来シーズンも同じようにプレゼンテーションを行いたいですか?

M :しますね。やっぱり、やり始めたらずっとしないといけない。大切なバイヤーがちゃんと世界中から来てくれてるんですよ。手紙ももらって、「ロンドンは行けないけれど、パリのトラノイで買うから」って言ってくださる方もいたり…。

今回のプレゼンテーションは効果があったので次もやりたいな。わかりやすいじゃないですか。こういうインスタレーションは特に。たった10のアウトフィットでもコレクションラインがはっきりと分かるから。これはやってよかったなと思って。

プレゼンテーションが実現したこともそうですけど、すごいラッキーなんですよ、私。例えば、「絶対こんな雰囲気のデザインをやってみたい」と思ったら、形にできるファクトリーが探せたり。

これは別のインタビューなどでも話してますが、一緒に働く人を募集した時の話です。モード学園とか文化服装学院とか、ものすごい優秀だとか賞をもらったとか、そんな人ばっかりが来たの。でも、うちのマネージャーの人たちはすごくおかしくて、「運のええやつしか取らへんねん!」って言って、全部あみだくじで決めてました。面接とか関係なく。

―では、ミチコロンドンで働くスタッフは運のいい人ばかりなんですね。

M :そう、運のいい人ばかり。ラッキーな人は最初からラッキーな人。ラッキーはラッキーを呼ぶから。これしかないです。

 

「運」も「波」も味方につけたプレゼンテーション


インタビューを終えて感じたことは、会場にいるスタッフ全員の雰囲気が他の会場とは違うことでした。気さくで活気があるバッグステージ、なにかアットホームなプレゼンテーション会場。そして新作コレクションの注目度も高く、デザイナーが感じる「波」が来ている予感を抱きます。最後に付け加えるように発した「ラッキーがラッキーを呼ぶ」と言う言葉通り、ファッションの流れを味方につけているようにも感じました。“ファッショントレンドは繰り返す” という誰もが知っている常識をこの目で確認できるようなプレゼンテーション会場でした。

 

高嶋 一行(たかしま・かずゆき)
ファッションライター

ロンドンのELEY KISHIMOTOにてデザインアシスタントを経験後、日本では海外ブランドのセールス・PRエージェント会社に勤務。 現在はイギリスに戻り、英国を中心としたファッション記事を執筆中。 現在、ファミリーセールやサンプルセールの情報サイト「tokyosamplesale.com」(毎日更新)も運営している。

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