10周年を迎える阪急西宮ガーデンズ―8期連続で増収、地元住民の心をつかむ | 樋口尚平の「ヒントは現場に落ちている」vol.43 | アパレルウェブ
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10周年を迎える阪急西宮ガーデンズ
8期連続で増収、地元住民の心をつかむ

2017.7.19
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日本市場において、ショッピングモールと呼ばれる複合型の商業施設は拡大・発展を続け、昨今では早くも淘汰の時代に入りつつある。しかしその一方で、地道に顧客を増やし、競合の激しい市況下で堅実に売り上げを伸ばしている施設もある。今回ご紹介するのは、そうした好調なショッピングモールの1つ、「阪急西宮ガーデンズ」だ。来年(2018年)に開業10周年を迎える同施設は、8期連続で増収を達成している。その魅力と強みは一体何か。

 

住みたい街No.1に開業



地域密着型で地元住民を取り込む「阪急西宮ガーデンズ」

阪急阪神ビルマネジメントが運営する「阪急西宮ガーデンズ」は、2008年11月26日にグランドオープンした。住みたい街として人気の高い東京・吉祥寺に対し、関西では西宮の街が上位にランクインされる。こうした“居住地”として人気の場所に、準郊外型商業施設として開業したのが阪急西宮ガーデンズだ。

阪急百貨店とGMSのイズミヤをアンカーテナントにして、その間を専門店街がつなぐという典型的な“2核1モール”の構造で、敷地面積は7万平方メートル、賃貸面積は10万7,000平方メートル(専門店部分が4万6000平方メートル)。2016年度の売上高は796億円(前年比0.2%増)で(百貨店部分含む)、8期連続の増収。入館客数は1,995万人(前年比0.5%増)だった。初年度が640億円だったというから、その業容は確実に拡大している。

立地は大阪・梅田と神戸・三ノ宮のちょうど真ん中辺り――阪急電鉄・西宮北口駅の南側に位置する。阪急阪神グループの旗艦店とも言える「阪急うめだ本店」から特急電車でおよそ20分の距離にある。当初は「カニバリゼーションが起こるのでは?」という懸念する声もあったが、9年目を迎えた同施設は堅調な推移を続けている。

 

「手の届く上質」が顧客ニーズに合致


元々、阪急西宮ガーデンズがあった場所には、野球場「阪急西宮スタジアム」があった。再開発事業で現在の阪急西宮ガーデンズが建設された。周辺は“西宮七園”(にしのみやななえん)と呼ばれる高級住宅街として、別荘地的な位置付けで古くから人が住み始めた土地だ。戦前から住宅地として開発が進んだ地域で、代々住んでいる人が多く、世代の層が厚いという。実際、阪急西宮ガーデンズに訪れる来館客の客層の幅も広い。新たに移り住んでくる人もいるそうだが、中心は地元住民である。

住宅地として発展してきた地域だったため、商業施設が受け入れられる素地はあったようだ。こうした地元住民のテイストに合った施設を作るという構想が、阪急西宮ガーデンズという形に結実した。顧客層の中心は35〜45歳だが、平日は女性客が多い。2014年に大規模な改装を実施した後は、若い世代の来館も増えている。平日の客数は4万〜4万5,000人、週末は7万〜8万人で、その差は1.5倍程度。週を通して、比較的まんべんなく集客できている。地域密着を意識した“いたずらに高過ぎず、上質感を持ち合わせた”テナント構成が、顧客ニーズにうまく合致しているようだ。

8期連続で増収を達成した理由は何か? 同施設では、「複合的な要素が絡み合い、相乗効果が表れている」(阪急阪神ビルマネジメント執行役員、三輪谷雅明・阪急西宮ガーデンズ館長)と分析する。専門店街・百貨店・GMSという物販テナントを軸に、同館5階のシネマコンプレックス、4階の露天の庭をはじめ、隣接する兵庫県立芸術文化センターとの回遊性もあるようだ。

同センターは阪急西宮ガーデンズより2年早く開館したコンサートホール。その稼働率は96%と非常に高く、来場者数は年間60万人。阪急西宮ガーデンズにはない要素を補っている。そのほか、グループの顧客カード「阪急阪神おでかけカード」が昨年4月から使用できるようになったことも大きい。同グループの系列店で使えるため、梅田の阪急うめだ本店や阪急三番街などとの買い回り機会が増えた。元々、阪急電車とその沿線施設で顧客を取り込む施策を進めてきた阪急電鉄グループだが、それを地で行く取り組みである。

 

ファッション系テナントが復調傾向


今春はファッション系のテナントが健闘しているという。「ジャーナルスタンダード レリューム」や「ユナイテッドアローズ グリーンレーベル リラクシング」などのセレクト系ショップを中心に、復調傾向にあるようだ。7月1日から始まったセールも前年同期比3%増でスタートした。喫茶系や雑貨なども増やしているが、軸足に据えるのはやはり“ファッション”系テナント。「カフェ系などを増やしている面もあるが、ファッション系は、顧客に満足してもらえるようなテイストの商材をきちんと押さえたい」(三輪谷館長)と強化点を説明する。

前述の2014年の大規模改装では、全256店の約30%に該当する80店(新規48店、改装32店)をリニューアルオープンした。レディスファッション、ファッション雑貨、スポーツファッション、大型のカジュアル店などを導入した。今春には、1階のフードコート「ガーデンズキッチン」を全面リニューアルした。

また、同施設の工事ではないが、来秋をめどに開業が予定されているのが、阪急西宮ガーデンズと西宮北口をつなぐ“ペデストリアンデッキ”(遊歩道)途中に建設される「西宮北口阪急ビル」(仮称)。このビルを“通り抜けて”、阪急西宮ガーデンズへ到着するという構造になる。同ビルは地上10階建て。低層階には飲食や物販テナント、上層階には教育系のサービス施設を誘致する計画だ。

同施設は来年、開業から10周年を迎える。節目の年に向けて、イベントなど様々な販促活動を計画中だ。三輪谷館長は、「地域からインスパイアされながら、何が必要かを考えている」と語った。土台には、地域密着という考え方があるようだ。

 

 

■阪急西宮ガーデンズ http://nishinomiya-gardens.com/
■阪急うめだ本店 http://www.hankyu-dept.co.jp/

 

樋口 尚平(ひぐち・しょうへい)

ファッション系業界紙で編集記者として流通、スポーツ、メンズなどの取材を担当後、独立。
大阪を拠点に、関西の流通の現場やアパレルメーカーを中心に取材活動を続ける。

【ブログ】http://www.apalog.com/shohiguchi/

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