梅田地区に増える「ドミナント展開」を考える―大阪・商業施設の新勢力図 模索するテナント | 樋口尚平の「ヒントは現場に落ちている」vol.42 | アパレルウェブ
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梅田地区に増える「ドミナント展開」を考える
大阪・商業施設の新勢力図 模索するテナント

2017.6.21
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通常は特定の商業施設について取り上げる本稿であるが、今回は少し趣向を変えて、大阪・梅田地区の商業施設に出店するテナントの傾向について書いてみる。梅田地区を定点観測していると、退店したテナント、新たに出店するテナントなどの色々な変化を見つけることができる。一時的な動きかも知れないが、最近感じた変化をご紹介する。

 

実は勇気がいる“初モノ”導入



2013年4月に開業したグランフロント大阪。大阪の商業施設の勢力図を変え、ランドマークとしても定着した(2015年撮影)

JR大阪駅ビルの再開発事業に合わせて、伊勢丹の出店が決定した直後から、梅田地区の商業施設では急速に増床・改装の計画が増えていった。もちろん、競合が激しくなることへの対策だが、駅ビルに入居するファッションビル「ルクア」や、隣接するJRの所有する操車場の再開発事業で開業した複合商業施設「グランフロント大阪」の存在も大きな影響を与えた。新規テナントや新業態の導入もおのずと増えていった。

新しい商業施設が開業する時、よく使われる“謳い文句”が「○○初出店」という言い回しだ。「日本初」や「西日本初」あるいは「新業態」といった文言が、ニュースリリースを賑わせることはよくあることだ。その方がマスメディアに取り上げてもらえる確率が増えるし、端的に施設の特徴を発信することができる。

過去、様々な商業施設の運営担当者に話を聞いてきたが、実はこの“初物”のテナントを導入する行為には、勇気がいるらしい。顧客からの認知度が低く、安定した売り上げの保証がないことがその理由だ。それならばむしろ、名前が知れ渡っている有名なテナントを誘致した方が、売り上げが計算できるという。坪数の大小にもよるが、施設全体のバランスを考えての新規テナントの導入らしい。

今回、取り上げたいと思った“最近感じた変化”というのは、“初モノ”ではなく、実績があるテナントの導入が増えているのでは?ということだ。商業施設の都合なのか、表題に書いたドミナント展開(1つのエリアに集中出店すること)を進めているテナントの方針なのかは分からないが、安定した収益性を考えれば至極、合理的な判断だろう。表題の「梅田地区に増える「ドミナント展開」を考える―大阪・商業施設の新勢力図 模索するテナント」という表現は、“結果的にドミナント展開するように見えるテナントが多い梅田地区”という言い回しに替える方が良いかも知れないが。

 

「多店舗型」「引っ越し型」も…安定収益を求めて



「ルクア イーレ」の「ザ・ノース・フェイス マン」。グランフロント大阪に出店する「ザ・ノース・フェイス プラス」との住み分けを考慮した

すでに梅田地区へ店舗を構えているが、2店舗目を出店したケースをいくつかご紹介する。今春では、「ルクア」に出店している「クリスピークリームドーナツ」が同地区にある地下街「ディアモール大阪」に出店した。また、化粧品の「shiro」も「グランフロント大阪」に加えて、「ルクアイーレ」にも店舗を構えた。食料品の「久世福商店」も「阪急三番街」に新規出店したが、近々「ディアモール大阪」にも出店する。「スープストックトウキョウ」も「ルクア」に続いて、「阪急三番街」に出店した。「スープストックトウキョウ」については取材する機会があったので、出店の意図を聞いたが、「店のコンセプトと導線が異なるため競合はしない」という判断だった。

今挙げたケース以外にも、2、3店舗を梅田地区内に出店するケースはいくつもあった。アウトドアブランドの「エーグル」は、MDの方針変更の影響もあり、現在は店舗数が減っているがかつては多店舗展開していたし、「ザ・ノース・フェイス」などは現在も複数の店舗を展開する。「ザ・ノース・フェイス」は「グランフロント大阪」では「ザ・ノース・フェイス プラス」「サタディ・イン・ザ・パーク」、「ルクアイーレ」ではメンズ業態の「ザ・ノース・フェイス マン」、アウトドア専門店ではレギュラーラインといったように、店舗コンセプトを変えて多店舗展開している。ユナイテッドアローズも展開業態を分けて、複数施設に出店している。余談だが、ユナイテッドアローズは過去、梅田地区において、新しい施設ができるたびに引っ越し出店してきた経緯がある(ディアモールからイーマ、ルクアへ移転。グランフロント大阪にはビューティ&ユースを出店する)。同じ業態の店舗数を増やさずに維持するという方針は明確だ。

実に当たり前のことではあるが、ドミナント展開もMDがしっかりしたブランドでは成功しているが、そうでない場合は過剰供給になる。商業施設の集積度が高まった梅田地区では、多店舗化を目指すテナントには最適の環境なのだろう。その半面で商業施設側には、安定した収益の見込めるテナントを誘致できるというメリットがある。そういった双方の思いが表れた現象なのだろう、と考えた。また、関係各社に色々お聞きしてみよう。

 

■ルクア大阪 http://www.lucua.jp/
■グランフロント大阪 https://www.grandfront-osaka.jp/
■阪急三番街 http://www.h-sanbangai.com/

 

樋口 尚平(ひぐち・しょうへい)

ファッション系業界紙で編集記者として流通、スポーツ、メンズなどの取材を担当後、独立。
大阪を拠点に、関西の流通の現場やアパレルメーカーを中心に取材活動を続ける。

【ブログ】http://www.apalog.com/shohiguchi/

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